UNIPULSE
| UNIPULSE TOP | プライバシーポリシー | SITE MAP |
お問い合せ
ユニパルス会社紹介製品情報投資家の皆様へコラムニュース求人案内
UNIPULSE TOPコラム 「計測の世界」 > 進化するはかり
コラム
計測の世界

第2回:進化するはかり
 食肉店などの店頭では、目方と同時にその料金まで表示してくれるはかりが一般的になってきました。数年前までは注文の目方よりもわずかに多くをはかりに載せて、超過分はおまけしてくれることがむしろ当たり前でした。なかには天才的な技を持つ店員もいて、いつでもこちらが注文した目方ぴったりの量をはかりに載せ、私たちを驚かせたりしたものでした。しかし、当然ながらこういった天才的な技を持つ店員はごく少数派であり、平均と標準が美徳とされる世の中の到来と共に、誰が計っても正確な料金がはじき出せ、簡単に在庫管理が行える料金はかりが急速に普及してきました。その陰には黙々とインテリジェンス化を進めているはかりの存在があったのです。

 はかりといえば、一般的に台ばかりやバネばかりなどの古くさいイメージを持たれがちです。ところが、近年のはかりのインテリジェンス化は目を見張るものがあります。「はかる」という行為に立ち向かう先人達の知恵が、そのままはかりに詰め込まれているかのようです。なかには一回一回の計量の状態を自分自身で解析しながら、より正確な計量を行えるように制御している、自ら学習するはかりもあります。本稿ではこういった先進のはかりの一部をご紹介します。

 テレビの映像などで見かけるようになってきましたが、粉体を缶などの入れ物に充填する行程では、もっぱら「重さを予測するはかり」が使われます。八百屋などでよく見かける上皿式のバネばかりで、人が粉体を計量する様子を想像してみてください。缶の中身が8割ぐらいの量になるまでは、粉体をドサドサッと投げ込むように投入します。このときのバネばかりの針は、ふらふらと振動して正確な重量を読みとることは困難です。中身がいっぱいに近くなると、針が振動をやめるまでしばらく待って、振動が止まったところで決まった量になるまでさらさらとゆっくり粉体を投入します。

 機械による計量でこの動作を再現すると、非常に時間がかかる非効率的な充填装置になってしまいます。そこでこれまでは、最初のドサドサッという投入時に電気的なフィルタをかけて無理矢理振動を取り除き、なるべく正確な重量値を読みとることで早く投入する努力をしていました。その結果、粉体を入れる量にもよりますが一分間に約10本の投入ができるまでに性能が向上しました。私たちはさらなる性能の向上を行うために振動そのものの要因(粉体の重量や投入する高さなど)をあらかじめ知ることで振動そのものを正確に予知し、そこから正しい重量値を予測して投入を行うはかりを開発し、一分間に約15本から20本近くの投入ができるまでに性能を上げることができました。

 粉体のような連続充填では、常に自分の動作をフィードバックし学習する能力を持つはかりが求められますが、これが固形物になるとまた違った能力が求められます。ジャガイモの小売袋詰めなどがそうです。計量物が一個一個の大きさや重さがまちまちな固形物のときには、連続的に詰め込むことができません。この場合には、10数個の計量皿を持ったはかりの登場となります。たとえば袋詰めする量の約4分の1ずつを計量皿に載せ、その中で設定された計量値に最も近くなるような組み合わせの計量皿を4つ選び出して袋詰めを行うのです。この場合はいろんな組み合わせを考えることができる能力を持ったはかりが必要とされます。 

 入れ物(風袋)に対して中身の軽いものの計量も工夫が必要です。たとえば粉ミルクなどは、入れ物の缶に対して中身が非常に軽く、しかも缶のなかには計量用のスプーンも入っています。缶やスプーンはどれも同じように見えますが、重さには当然ばらつきがあります。このようなときには、いくつかのはかりが協力しあう連携プレイ作戦をとります。まず第一のはかりが缶とスプーンの重さを量り、そのデータを第二のはかりに伝えます。第二のはかりでは目的の重さの7割程度の粉ミルクを一気に落とし込み、その重さを正確に計量し第三のはかりに伝えます。第三のはかりで残り約3割の粉ミルクを目的値いっぱいになるように充填するわけです。

 連携プレイ作戦をとる理由は、高速化のためです。第一のはかりでは量が変化しない入れ物を計るだけなので時間は大してかかりません。第二のはかりでは正確に7割にする必要はなく、結果としてどれぐらいの粉ミルクが充填されたかを計るだけなので、これも時間はかかりません。第三のはかりで初めて充填しながらの計量を行うわけですが、量が少ないので時間は大幅に短縮されます。結局一回で一気に入れようとするよりも、三回に分けて充填した方が早いというわけです。急がば回れのよい例です。

 これらのように実際に手に取れるものを計るのとは違って、最近では手に取れないもの、つまり物質の内部にあるようなものまで計ってしまおうという試みも行われています。たとえば人間の体脂肪です。人体の電気抵抗から脂肪率を推定する簡便な装置が普及していますが、これをもっと正確に計りたいというのです。日本大学では、人を水中に入れたときと空中での重さとの比重に年齢・性別・身長などのパラメータを考慮して正確な体脂肪率を求めようとしています。  

 実は、ジャガイモの取引はこれと同様の方法ですでに実用化されています。ジャガイモは大きさや重さよりも、どれだけでんぷんが含まれているかが重要で、生産者が出荷するときの価格はでんぷん量で決まります。そこでジャガイモをかごに入れて空中と水中とで重さを量り比重を出します。その値にある定数をかけてでんぷんの量としているのです。農産物は質量ではなく品質を計る時代に突入しはじめているのかもしれません。

 はかりは工夫次第でいろいろとおもしろい使い方ができます。意外かもしれませんが、医療の現場でも精密なはかりが役立っています。腎臓病で人工透析を受けている人たちのための「ベッドスケール」というはかりです。透析は4〜5時間かけて血液をろ過し老廃物を取り除きます。除去された老廃物の分だけ体重は軽くなっていきます。その値を読みとって透析が完了したかどうかを見分けるために使用されているのです。この変化をとらえるのには、約5000分の1の精度のはかりが使われています。

 さらに精度を必要とするはかりには、工場から出荷される自動車の重さを量るものがあります。新車の付属品はかなりの量になり、しかも置かれる場所も車内のあちこちに分散しています。装備忘れの点検を行うのはひと仕事でした。そこで、出荷時に重さを量って規定値に足りなければ、何かを忘れていることになります。付属品の重さはまちまちなので、実際には「何かが足りない」ではなくて「これが足りない」までわかるのです。これは約2tの車体に大して500gの付属品の不足を計るので、10,000分の1の精度が必要でした。

 このように、はかりはもはや重さを量るためだけの道具だけではありません。工夫次第で、さまざまな用途に応用することができる優れたツールになり得ます。古い技術もアイデア次第では信頼のおける生きた技術として再活躍することができるのです。

はかる N0.51 掲載

(c)Copyright 2004 UNIPULSE Corp. All rights reserved.ユニパルス株式会社